熱海「律花嬢へ捧げる誕生日SS-。
叡「……アンタ許可取ったの?
熱海「書かせて頂きますーとは言った。
叡「……律花のキャラについて確認取った?
熱海「てへ。
叡「呑み込め清姫ェッ!!
熱海「みぎゃああああああああああ
叡「……ふう。
あ、律花の背後さんは不都合あったら言って頂戴な。
速攻で熱海に謝罪&修正させるから。
●
「さて、と」
稽古を早めに切り上げて、台所に立つ。
無地のシンプルなパステルグリーンのエプロンは、西明叡の細身で中性的な出立と相俟って様になっている。
下は既に汚れても構わない、使い古したジャージに着替えてある。腕まくりして準備は万端だ。
傍らには弁当箱ふたつ。ひとつは自分のもの。
そして、もうひとつ。
「折角人に食べて貰うんだもの、気合入れなきゃね!」
先日誕生日を迎えた親友へ。
実は叡は彼女の誕生日を当日に祝い損ねていた。一応プレゼントも買ったのだが、当日に渡せなかったお詫びとして。
(あの子は気にしなくて良いって言うだろうけど、ワタシの気が済まないのよ。アンタ和食好きだったろうし、見てなさいよ)
ふふん、とこの場に居ない親友に向けてほくそ笑む。
とは言え、彼の家から学園へと向かうのには一時間以上も掛かる。時間との勝負だ。
効率良く無駄の無い動きで、弁当を完成させる、自分に課した任務を今、彼は果たそうとしていた。
まず、仕込みとして煮汁と南蛮酢を作る。
続いて切るものを切る。鮭、人参、玉葱、白葱、そして――強敵南瓜。
(でも、まだ秋の内に南瓜は美味しく頂いておきたいし)
そんな事を考えながら叡は、徐に南瓜の中央にグソリ、と菜箸を突き立てた。
眉間に皺を寄せながらそれを貫通させ、抜き取る。その穴に包丁の先端を差し込み、下へと落とす。反対側も。そして、包丁を置いてぱかりと割った。
祖母から教わったと、母に教えられた切り方だ。意外と力も然程要らない。
「ふう。さて、と」
食べやすい大きさに切った南瓜を、煮汁と一緒に煮詰める間、だし巻き卵を焼きに掛かる。
ふわりと焼き上げた卵を切り分けた後、速攻でフライパンを洗って鮭の南蛮漬けを作り始める。人参、玉葱、白葱も入って栄養たっぷりだ。
その頃には南瓜も良い具合に煮詰まっており、火を消し落し蓋をして余熱を取る。
そして実は今迄の工程の間に、時間を掛けて作っているものがあった。それは。
「……うん、良い感じじゃあないの! 焼きおにぎり完成!」
こんがりと香ばしい臭いを立てて焼き上がった焼きおにぎり。
デザート代わりに栗きんとんも付けて、お弁当は出来上がり!
「それじゃあ盛り付けますか! ああ、でも南蛮漬けだけはギリギリまで漬け込んで冷やしておきましょう」
料理は愛情、とは良く言ったものだと鼻歌交じりに菜箸を動かしながら叡は思う。全く、食べる人間の事を考えるだけで楽しいし、美味しくなる。
綺麗に盛り付けられた弁当箱を見て、叡の表情が綻んだ。
●
屋上に出ると、季節柄和らいだ陽光に出迎えられる。
「気にしなくて良かったのにー」
「アンタは良くてもワタシの気が済まないのよ。はいこれ、まずプレゼントね。当日間に合わなかったけど」
「御守り? 有難う、何に着けようかしら」
手渡した縮緬の御守りを眺める親友――律花を微笑ましげに眺めてから、弁当箱を手渡す。
「はいこれ、昨日電話で言ってた奴ね。メインだけはご飯や他のおかずとは別に一番下に入れてあるんだけど、家でタレに漬けてる時間無かったからタレも少し入れてきちゃったわ。気を付けてはいたけど、中跳ねてないかしら……」
「どれどれ……わ、美味しそう! タレ、跳ねてない事も無いけど全然問題無いレベルよ」
「なら良かったけど……真剣に車送迎を考えるべきかしらね。お高く留まってるって言われるのやだから避けてたんだけど」
「あはは」
「まあ取り敢えず食べてみてよ、今日はいつも以上に上手く出来た気がするのよ」
焼きおにぎりに、鮭と野菜の南蛮漬け。南瓜の煮物にだし巻き卵、栗きんとん。
「ほんとに叡、美味しそうなお弁当作るわよね。今度何か作り方教えてよ」
「アンタ意外と和食好きだもんね。そうね、簡単なので良かったら」
「と、そろそろ食べないとね」
いただきます、と手を合わせてから弁当に箸を着けて――律花の表情が綻ぶのを見て、叡も破顔した。
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「さて、と」
稽古を早めに切り上げて、台所に立つ。
無地のシンプルなパステルグリーンのエプロンは、西明叡の細身で中性的な出立と相俟って様になっている。
下は既に汚れても構わない、使い古したジャージに着替えてある。腕まくりして準備は万端だ。
傍らには弁当箱ふたつ。ひとつは自分のもの。
そして、もうひとつ。
「折角人に食べて貰うんだもの、気合入れなきゃね!」
先日誕生日を迎えた親友へ。
実は叡は彼女の誕生日を当日に祝い損ねていた。一応プレゼントも買ったのだが、当日に渡せなかったお詫びとして。
(あの子は気にしなくて良いって言うだろうけど、ワタシの気が済まないのよ。アンタ和食好きだったろうし、見てなさいよ)
ふふん、とこの場に居ない親友に向けてほくそ笑む。
とは言え、彼の家から学園へと向かうのには一時間以上も掛かる。時間との勝負だ。
効率良く無駄の無い動きで、弁当を完成させる、自分に課した任務を今、彼は果たそうとしていた。
まず、仕込みとして煮汁と南蛮酢を作る。
続いて切るものを切る。鮭、人参、玉葱、白葱、そして――強敵南瓜。
(でも、まだ秋の内に南瓜は美味しく頂いておきたいし)
そんな事を考えながら叡は、徐に南瓜の中央にグソリ、と菜箸を突き立てた。
眉間に皺を寄せながらそれを貫通させ、抜き取る。その穴に包丁の先端を差し込み、下へと落とす。反対側も。そして、包丁を置いてぱかりと割った。
祖母から教わったと、母に教えられた切り方だ。意外と力も然程要らない。
「ふう。さて、と」
食べやすい大きさに切った南瓜を、煮汁と一緒に煮詰める間、だし巻き卵を焼きに掛かる。
ふわりと焼き上げた卵を切り分けた後、速攻でフライパンを洗って鮭の南蛮漬けを作り始める。人参、玉葱、白葱も入って栄養たっぷりだ。
その頃には南瓜も良い具合に煮詰まっており、火を消し落し蓋をして余熱を取る。
そして実は今迄の工程の間に、時間を掛けて作っているものがあった。それは。
「……うん、良い感じじゃあないの! 焼きおにぎり完成!」
こんがりと香ばしい臭いを立てて焼き上がった焼きおにぎり。
デザート代わりに栗きんとんも付けて、お弁当は出来上がり!
「それじゃあ盛り付けますか! ああ、でも南蛮漬けだけはギリギリまで漬け込んで冷やしておきましょう」
料理は愛情、とは良く言ったものだと鼻歌交じりに菜箸を動かしながら叡は思う。全く、食べる人間の事を考えるだけで楽しいし、美味しくなる。
綺麗に盛り付けられた弁当箱を見て、叡の表情が綻んだ。
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屋上に出ると、季節柄和らいだ陽光に出迎えられる。
「気にしなくて良かったのにー」
「アンタは良くてもワタシの気が済まないのよ。はいこれ、まずプレゼントね。当日間に合わなかったけど」
「御守り? 有難う、何に着けようかしら」
手渡した縮緬の御守りを眺める親友――律花を微笑ましげに眺めてから、弁当箱を手渡す。
「はいこれ、昨日電話で言ってた奴ね。メインだけはご飯や他のおかずとは別に一番下に入れてあるんだけど、家でタレに漬けてる時間無かったからタレも少し入れてきちゃったわ。気を付けてはいたけど、中跳ねてないかしら……」
「どれどれ……わ、美味しそう! タレ、跳ねてない事も無いけど全然問題無いレベルよ」
「なら良かったけど……真剣に車送迎を考えるべきかしらね。お高く留まってるって言われるのやだから避けてたんだけど」
「あはは」
「まあ取り敢えず食べてみてよ、今日はいつも以上に上手く出来た気がするのよ」
焼きおにぎりに、鮭と野菜の南蛮漬け。南瓜の煮物にだし巻き卵、栗きんとん。
「ほんとに叡、美味しそうなお弁当作るわよね。今度何か作り方教えてよ」
「アンタ意外と和食好きだもんね。そうね、簡単なので良かったら」
「と、そろそろ食べないとね」
いただきます、と手を合わせてから弁当に箸を着けて――律花の表情が綻ぶのを見て、叡も破顔した。
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